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古染付 佐藤千壽・村山武 昭和44年 小山冨士夫推薦 古染付の一品をえりすぐってその全容を示すことを意図された図録

古陶愛好の道は奥が深く、かつ多岐にわたっている。しかし愛陶家の多くはまず染付にひかれてこの道に入ったということは言えるだろう。可憐で寂しげな李朝の染め付け、紺絣かゆかたのように親しみ深い古伊万里の染付、同じ染付磁器でもその性格と表情は様々である。
本書の古染付は中国明時代末期に景徳鎮窯で焼成されたものであるが、為政者の手から離れて自由にのびのびとした空気の中で作られたものである。作風は奔放、快活で庶民の生活を生き生きと伝えている。
古染付を深く愛し、みずからも多数の名品を収蔵される佐藤千壽氏と、陶磁協会の新鋭である村山武士が、古染付の一品をえりすぐってその全容を示すことを意図された図録であり、焼成、絵付け、形体の変化ある魅力を心ゆくまで味わえる絶好の書である。
半径29×28cm
ページ数212ページ
原色版32点、単色版69点、
収録点数91、
資料写真約30点
古染付の面白さ佐藤千壽
古染付の位置村山武
図版解説記録

小山富士夫文
天啓7年間に将来された古染付はおびただしい数で、北は奥羽・北陸から、南は四国九州の果てまで、特に多い近畿地方の旧家という旧家にはゴロゴロとしており、こんにち日本に伝世する古染付は何万、何十万という数だろう。しかし不思議なことに古染付は今日中国にもなく、欧米にも近東東南アジア台湾琉球でも見かけない。日本だけに残っている中国の焼き物である。

佐藤千壽さんは我が国第一の古染付の蒐集家だし、すぐれた目で特に美しいものを選ばれている。今度佐藤さんと日本陶磁協会の村山武君が想を新たにし、古染付の画期的な新著を公にされるそうだが、不朽の名著となるものと信じ、御購読をおすすめしたい。

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