書籍アーカイブ

書店ではあまりみかけない書籍をご紹介

践祚大嘗祭・研究篇・資料篇/田中初夫/三笠宮崇仁・入江相政・フロイドロス/定価20000円/重要参考図書12編を写真複判して収録/画期的大著

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三笠宮崇仁

新嘗祭といえば、かならず母(貞明皇后)の話を思いだす。 「しんじょうの夜は、清らかなこうごうしいものでした.........御所のお火はすべて切り火であらたにされました......女官たちはみな白いうちきを 着ていました............」(天皇親祭の間、皇后や女官たちは御所でひかえている。) もう三十年も前のことなので、私の記憶もとぎれとぎれであるが。
私は新嘗祭に参列するようになってから、ちょうど四十年になる。毎年一度、神嘉殿前庭の森閑とした闇の中にゆらぐ庭嫁の炎を見つめながら、
白いとばりの中でおこなわれている天皇親祭のありさまをあれこれと思いめぐらすのである。 今日では皇室祭祀があまりに儀式化されていて、宗教的感情に訴えるものが失われているが、この新嘗祭だけは別である。最近のように科学万 能の社会に住んでいると、新嘗祭の夜は魂のふるさとにもどったように感じる。
昭和三年におこなわれた大嘗祭のとき私は未成年で参列できなかったので、それについて語る資格はない。おそらく新嘗祭の本源的なものがうかがえたにちがいない。大嘗祭については本書にあますところなく述べられているのでふれる必要はない。ただ大嘗祭が日本古代社会の宗教的・ 政治的・生産的側面を浮彫りにしていることを強調すれば足りると思う。また古代における天皇の本質を理解するに最良の手掛かりだと信じる。 ひとくちに天皇とよび、天皇制と称しても、二千年の歴史の経過中に、その性格や任務など、かなりの変遷があった。さればこそ、今日まで天皇制が存続したのである。また歴史には累積と変容はあるが、断絶はない。今日の天皇、そして明日の天皇を考える場合にも、古代における天皇 の本源的性格を認識しておくことは重要である。それは大嘗祭の研究によって得られる。

田中初夫博士はつとにこの問題をとりあげられ、貴重な資料を豊富に収集し、それをつぶさに分析し、比較し、総合された。宗教の研究はとかく観念論に陥りやすいが、博士の研究はあくまでもアカデミックであり、足が地についている。

資料編序文より
践祚大嘗祭を研究するのに重要な参考図書を十二篇選んで本書に附載することにした。参考図書については本篇の第一章に略述をしたことであるが、これらの図書については二つの方面があるのである。一つは対象を大嘗祭に限定している専門書であり、他の一つは大嘗祭は関連事項として取扱われている図書である。その両者は共に研究書であり、資料書であり、解説入門書でありというように各方面にわたって参考とすることの出来る図書であるが、大嘗祭自身に対して、従来どのような研究が行われて居り、その研究水準はどのようであるかというようなことについて一応の知識を得て置きたいというには、第一の方の図書を出来るだけ広く利用すべきである。一方大嘗祭に対する自分自身の見解をまめて持ちたいという場合には、資料として役立つ書物について直接研究を進めて見なければならない。先人の所説を適宜案配排列してみてもそ れでは自分の見解をもつというためには、資料に自分で当って研究をしてみなければならないのである。この資料として役立つ書物には、大賞 祭を直接の対象としたものと、他のものによる関連の材料が資料として用いられるものとの二種類がある。

今回明治以前の所謂古典といわれる書物の中から、研究の直接の資料と考えられるもの十二種類を選んで本書に登載することにした。それは重要な根本資料をなすもの、或は一般書として是非披読しなければならないものというようなもので、収録するに当っては、刊行関係から見て、刊本の場合は原刊本、複刊のないもの、写本の場合は刊本のないものというようなものを取り上げ、写真複写によって原本の紙面をそのままに再製した。次に採択に当っての考えを記し て置こうと思う。

貞観儀式は活字本を使うのが便利であるが、その活字本の依った原本である天保五年版の木版本としてはこれ一種であり、比較的稀本のよう であるので、これを採用した。
延喜式は数種の木版刊本、活版本もあり、その活版本は古い方の木版本を底本にしているので、ここには木版本中校訂の最も良いものでも 複製のない雲州版を採用した。
口天仁大賞会記は活版本があるが、ここには巻子本の写本を用いた。巻子本になる前は十数枚の写本であったもので、その改装本である。活字本の方も底本に誤字が多いようであるが、本巻の方も誤字が多く、佳本とは言えないが、資料としては極めて重要な資料なので採用した。

島更紗段通・日本更紗・世界の更紗段通をたずねて/更紗・段通の源流と交流を求めて世界の更紗・段通を一堂に集め各地の文様を併せて展観

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このたび当館では特別企画展として「鍋島更紗段通・日本の更紗・世界の更紗段通をたずねて」の展覧会を開催することになりました。鍋島更紗は慶長時代に九山道清によってはじめられて以後、藩政時代には 半兵衛更紗としてその名を知られてきました。


世界的にみてもその製作技術は極めてすぐれ、日本の更紗の中でも特異な 位置をしめております。 一方、鍋島段通は元禄時代古賀清右衛門によってはじめられ、藩政時代 には「扇町紋氈」としてその名を知られ、その技法は赤穂、堺にまで影響を 及ぼしています。


また、これらの更紗・段通の源流と交流を求めて、世界の更紗・段通を一堂に集め、各地の文様を併せて展観することを試みました。

この展観にあたって貴重な資料をご出品くださった各博物館並びに所蔵者各位に深く感謝いたします。
図録の発行にあたりまして、山辺知行氏、鈴田照次氏の各位からは、ご多用中にもかかわらず玉稿をいただき厚くお礼申しあげます。 この図録が肥前の文化史研究の一助となりますならば、まことに幸いであ
ります。

オオカミと人・自然からの護符/生物としての狼に加えて関連資料を取り上げ伝承・信仰・史実から生物多様性の象徴である狼の魅力を紹介

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かつて、北海道にはエゾオオカミが、本州・四国・九州の山々には、ニホンオオカミが、生きものたちの頂点に立つ動物として君臨していました。両者とも、残念ながら明治時代に絶滅したとされており、私たちは数少ない剥製や写真でしか、その姿を知ることができません。

 

しかし、オオカミという動物は、小さな子どもでもイメージすることができます。それは、赤ずきんちゃんや三匹の子豚、七匹の子ヤギなどの童話に登場する、ずるくて悪いオオカミ像であることが多いようです。ヨーロッパをはじめとする牧畜文化の社会では、家畜を捕食するオオカミは、悪であるという意識が強いことが影響しているようです。

 

一方で、古来の日本では、大きな群れをつくらず他の動物を圧倒する習性から、オオカミは信仰の対象とされ、現代でも民話や寺社などでは、神の使いとしての存在感を示しています。そこには、人間に危害を加える動物(悪)ではなく、人を超えた存在として、オオカミの姿を見ることができます。

本企画展では、生物としてのオオカミに加えて、若狭町鳥浜貝塚から出土したオオカミの骨や、地元の寺社に伝わるオオカミの護符をはじめとする関連資料を取り上げ、伝承・信仰・史実から、生物多様性の象徴であるオオカミの魅力を紹介します。

本企画展で示した、かつての日本人とオオカミとの関係をきっかけとして、皆様が人と自然との距離感を再度考えていただく機会になりましたら幸いです。オオカミの護符は自然からのメッセージでもあります。形は違えど、皆様の周りにも自然からの護符は存在しているはずです。現代は、改めてそれを感じさせる時代になっているのではないでしょうか。

最後になりましたが、本企画展の開催にあたり、資料の出品、写真の提供・掲載などにご協力いた
だきました個人・機関の関係各位に心より厚くお礼申し上げます。

法華讃・良寛和尚筆 加藤僖一 定価34000円 れまで存在が知られていながら所在がわからず写真版等で公開されたことは一度もなかった

法華讃・良寛和尚筆 加藤僖一 昭和57年

この「法華讃」の書的魅力をきわめる為に、どうしても部分の拡大写真がほしくなり、再度お願いして十二月 二日、妙高高原へ出かけた。雪にとじこめられぬようロープを取って山道をのぼった。雪国の、それも高原の条 宝物殿前の廊下で撮影にとりかかったが、たちまち手も足もお尻も、寒気にしびれてきた。しかし良寛の「法華讃 と二人きりになれた同行二人の興奮は、私に寒さを忘れさせた。ほんの短い時間、迷悟両忘の境地にひたれたような気がした。

この日の日記を見ると、妙高高原から帰った足で、地蔵堂の茂木弘次氏をたずねている。氏は良寛像の制作か けては、わが国の第一人者である。私はこの時が初対面であった。新潟大学教育学部の統合と、新校舎落成を祝て、同窓会、後援会の皆さんが、良寛銅像を寄贈して下さることになった。その等身大の石膏像を拝見させて ただいた。更に足をのばして新潟へ。夜おそく、同窓会、後援会幹部の方々にお目にかかる。台座の文字を揮毫 るようご依頼をうける。まことにめまぐるしく忙しい一日であった。
こうして写真も原稿をすべて出来上がり、印刷所へ渡すばかりとなった。私は、自費出版を続けている『良寛の書』の第八集にと計画をたてていた。そこへ求龍堂の徳田秀一氏から電話がかかってきた。「ずいぶんご無沙汰していますが変りありませんか。新潟へ移った様子はいかがですか。先生、ぜひ良寛の本を一冊書いて下さい」 - のお話。もう数年前からご依頼をうけているのに、いまだにおこたえしていない。しかしその時は、まだ「法華讃のことは黙っていた。

私の自費出版は一般にはほとんど市販されないから、それなりの利点と欠点とがあるものの、いたって気楽なに行き力。出版社がからんで、もしもうまくまとまらなかったら、折角の「法華讃」が日の目を見なくなる恐れがあれ 数日通った。それから徳山氏へ手紙を書いた。結果的には吉沢氏のご快諾るえられ、寛大なお心に感謝のほかはない。

徳田氏との打合わせの際、私の撮影はシロウトカメラなので、撮影しなおして下さるようお願いした。帰京された後、私の幅影した写真を専門家が検討したところ、和紙 コロタイプで十分いけるとの結論なので、ネガをお借り したい、というご連絡があった。アート紙オフセットなら私の写真で結構間にあうとしても、和紙にはどうかと思 っていたから、半信不疑のまま、急遽ネガをお送りした。そしたら再びお電話があり、石井氏の特別なご配慮によ り、もう原本が東京に着き、さっそく原寸大撮影をすることになったとのこと。冊子本ならちょいと鞄の中にも人 れられようが、細画では一人で持ちあげるのがやっとという大きさと重さである。石井氏の敏速なお手配には恐れ入った。

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鷦鷯伝・先代旧事本紀大成経 宮東斎臣編 天金本 李方子推薦 記紀以前の古代文献遂に発掘さる

太子の御偉業、その御聖跡を正確に訓みとらせているものは記紀ではなく、先代旧事本紀大成経であると私には思われてなりません。今度宮東齋臣先生御解読の鷦鷯伝・先代旧事本紀大成経が全編大冊として刊行されるということは、古典学術界の壮挙として注目致しております。

1981年 776ページ 天金本 サイズ約22cm*30.5cm 

 

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適情録・原本復刻版・解説2冊・線装20巻 呉清源解説 定価141800円 明治の文豪幸田露伴により中国古典棋書の最高の書物としてその価値が紹介

明治の文豪幸田露伴によって、中国古典棋書の最高の書物として、その価値が紹介された適情録は、こんにちまでその存在が知られていない、幻の書でありました。それがこのたび、29巻9図の全巻揃いの原典を得て、復刻刊行されることは、私たち囲碁を愛する者にとって大きな喜びであります。

適情録は、中国の明代、当時の貴族であり、以後研究家であった林応龍が若年の頃、壺中の三味境をきわめた手法を観て感動し、その記録を作っている間に、半紙が20束にもなり、それを基にして上梓したものであります。本書は、後に真の乾隆帝により編纂された欽城四庫全書総目提要に、後世まで長く残す貴重書として掲げられ、玄玄碁経・官子譜に並ぶ中国古典棋書の最もすぐれたものであります。

この適情録の原典は、京都大学名誉教授貝塚茂樹文学博士の父君、故小川琢治理学博士が愛蔵の漢籍の中でも特に大切にされていたものであります。小川博士は囲碁起源に初めて学術的メスを入れた人としても知られ、晩年にようやく入手されたものの、その詳細を調べられぬうちに世を去られました。この度、貝塚博士が父君小川博士の遺志を継ぎ、斯界のオーソリティと共同編纂に当り、適情録復刻に完全を尽くされたのであります。

適情録は北京図書館の稀覯本特別閲覧室に、清代になって複製された端本がわずかに残るだけとあり、まさに世界に人揃えしかない原典による復刻は貴重な文化財であります。こうした日本囲碁史を書き換える驚くべき真実を秘めた本書の刊行は、今日の棋界に重要な影響を与えることが予想され、ひいては日中文化交流にとっても意義があります。

 

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日本鳥類大図鑑・全4巻・増補改訂版 清棲図鑑 清棲幸保 前代未聞で世界無比の好著/世界の学者も之を見て敗戦日本の奇跡として驚愕且つ嘆賞することを確信する

世界にはおよそ8700種の鳥類が生息し、亜種を含めば少なくとも30000種に及ぶが、本書には日本及び旧日本(南樺太、千島列島、小笠原諸島沖縄諸島)産のほとんど全て、518種の鳥類の原色図を挿入し、亜種については図版で判別しうる程度のもののみを示した。なお、幼鳥や雛の原色図をも挿入し、雛の画は全て生きた実物から特に著者が描写したもの基とした。卵の原色図は実物の原色分解写真版によるものを採用した。

 序文より引用:「今この書の内容を見るに、記載は精細で独創性に富み、添えられた彩色図版は鳥類専門家として令名ある小林重三氏が戦前特に慎重且つ懇切に描かれたもので、清棲君の生態写真と共にいづれの方面から見ても前代未聞で、世界無比の好著であることは疑い無く、世界の学者も之を見て敗戦日本の奇跡として驚愕且つ嘆賞することを確信する。筆者はこれは専門家はもちろん、広く内外の本邦産鳥類に興味を持つ人々に向かって責任をもって推挙してはばからないのである。」京都大学名誉教授川村多実二

 

 

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