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オオカミと人・自然からの護符/生物としての狼に加えて関連資料を取り上げ伝承・信仰・史実から生物多様性の象徴である狼の魅力を紹介

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かつて、北海道にはエゾオオカミが、本州・四国・九州の山々には、ニホンオオカミが、生きものたちの頂点に立つ動物として君臨していました。両者とも、残念ながら明治時代に絶滅したとされており、私たちは数少ない剥製や写真でしか、その姿を知ることができません。

 

しかし、オオカミという動物は、小さな子どもでもイメージすることができます。それは、赤ずきんちゃんや三匹の子豚、七匹の子ヤギなどの童話に登場する、ずるくて悪いオオカミ像であることが多いようです。ヨーロッパをはじめとする牧畜文化の社会では、家畜を捕食するオオカミは、悪であるという意識が強いことが影響しているようです。

 

一方で、古来の日本では、大きな群れをつくらず他の動物を圧倒する習性から、オオカミは信仰の対象とされ、現代でも民話や寺社などでは、神の使いとしての存在感を示しています。そこには、人間に危害を加える動物(悪)ではなく、人を超えた存在として、オオカミの姿を見ることができます。

本企画展では、生物としてのオオカミに加えて、若狭町鳥浜貝塚から出土したオオカミの骨や、地元の寺社に伝わるオオカミの護符をはじめとする関連資料を取り上げ、伝承・信仰・史実から、生物多様性の象徴であるオオカミの魅力を紹介します。

本企画展で示した、かつての日本人とオオカミとの関係をきっかけとして、皆様が人と自然との距離感を再度考えていただく機会になりましたら幸いです。オオカミの護符は自然からのメッセージでもあります。形は違えど、皆様の周りにも自然からの護符は存在しているはずです。現代は、改めてそれを感じさせる時代になっているのではないでしょうか。

最後になりましたが、本企画展の開催にあたり、資料の出品、写真の提供・掲載などにご協力いた
だきました個人・機関の関係各位に心より厚くお礼申し上げます。