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適情録・原本復刻版・解説2冊・線装20巻 呉清源解説 定価141800円 明治の文豪幸田露伴により中国古典棋書の最高の書物としてその価値が紹介

明治の文豪幸田露伴によって、中国古典棋書の最高の書物として、その価値が紹介された適情録は、こんにちまでその存在が知られていない、幻の書でありました。それがこのたび、29巻9図の全巻揃いの原典を得て、復刻刊行されることは、私たち囲碁を愛する者にとって大きな喜びであります。

適情録は、中国の明代、当時の貴族であり、以後研究家であった林応龍が若年の頃、壺中の三味境をきわめた手法を観て感動し、その記録を作っている間に、半紙が20束にもなり、それを基にして上梓したものであります。本書は、後に真の乾隆帝により編纂された欽城四庫全書総目提要に、後世まで長く残す貴重書として掲げられ、玄玄碁経・官子譜に並ぶ中国古典棋書の最もすぐれたものであります。

この適情録の原典は、京都大学名誉教授貝塚茂樹文学博士の父君、故小川琢治理学博士が愛蔵の漢籍の中でも特に大切にされていたものであります。小川博士は囲碁起源に初めて学術的メスを入れた人としても知られ、晩年にようやく入手されたものの、その詳細を調べられぬうちに世を去られました。この度、貝塚博士が父君小川博士の遺志を継ぎ、斯界のオーソリティと共同編纂に当り、適情録復刻に完全を尽くされたのであります。

適情録は北京図書館の稀覯本特別閲覧室に、清代になって複製された端本がわずかに残るだけとあり、まさに世界に人揃えしかない原典による復刻は貴重な文化財であります。こうした日本囲碁史を書き換える驚くべき真実を秘めた本書の刊行は、今日の棋界に重要な影響を与えることが予想され、ひいては日中文化交流にとっても意義があります。

 

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